第六十三条(区分所有権等の売渡し請求等)

第一章 建物の区分所有
第六十三条(区分所有権等の売渡し請求等)

【第六十三条】
建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。

2 前項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。

3 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。

4 第二項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。

5 前項の規定による請求があつた場合において、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

6 建替え決議の日から二年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、第四項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。

7 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内にその着手をしないときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。
 

解 説

マンションについて建替えの決議が成立した場合、建物を取り壊すことになりますが、現在マンションに住んでいて反対している人をどうするか?という問題があります。
この点について区分所有法は、まず建替えの決議に賛成しなかった区分所有者(反対した者、棄権した者の双方です)から、建替えに参加するかどうか、を聞く必要があります。建替えない方がいいと思うけど、建替えるなら、建替えたマンションに済み続けたい、という人も当然いらっしゃるでしょうから、その場合には、ここで参加する、を選ぶことになります。
 
建替えにも反対、新しい建物に住むつもりがない場合、これは建替えにかかる追加支出をしたくない場合が多いと思われるのですが、この人たちにマンションから出て行ってもらうために、その保有する区分所有権等を売り渡すよう請求することができます。この請求は、決議に反対もしくは棄権して、参加の有無を尋ねても回答がない、人に対しても行うことができます。
この売り渡すよう請求する際の金額は、時価になります。
 
このように建替えに反対する人から区分所有権等を強制的に買い取る制度が区分所有法にはあるのですが、マンションの住人の中には、すぐに次の住居を探せる人ばかりではありません。また、建替え工事はすぐ翌日から始まる、というものでもありません。そこで、裁判所が認めること、すぐに引っ越すことが難しいこと(これを生活上著しい困難が生じた場合と言います)、その人が引越すまで建替えが全く進まない、という事情がないこと、の3条件を満たすと、1年以内で相当の期間、引越しを待ってもらうことができます。
 
また、売れと請求されたのでもっている区分所有権等を売渡したものの、いつまでたっても建替えが行われない場合、2年経てば、売り渡した人が逆に買い戻すことができるようになっています。
 

 

POINT

建替え決議が無事に成立しても、それですぐに建替え工事というわけにはいきません。
 
決議に賛成しなかった区分所有者に対して、もう一度建替えに参加するかどうかを考え直す機会を与えます。
 
重大なことですから、できるだけ慎重に進める必要があるのです。
 
そして、最終的に建替えに参加しない区分所有者に対しては、そのまま居座られては建替えエ事ができませんから、建物から出ていってもらう必要があります。
 
しかし、この場合でも建替え不参加者の都合を無祝して直ちに追い出すことはできません。一定の手続きが必要なのです。
 

 

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