第六十条(占有者に対する引渡し請求)

第一章 建物の区分所有
第六十条(占有者に対する引渡し請求)

【第六十条】
第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。

2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。

3 第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。
 

解 説

マンションの住人の一人が迷惑行為を行った場合に、その迷惑行為をやめるよう請求すること、専有部分を使用させないようにすること、持分を競売してしまうこと、という3つの対抗策がある、というご説明をしてきました。
 
この内、迷惑行為をやめるよう請求できるのは、区分所有者と、占有者に対して、でした。後の二つは占有者には適用がありません。
競売については占有者の持ち物でもないものを売却してしまうわけには行きませんので、適用がないことはある意味、当然とも言えます。これに対して、専有部分の使用禁止が適用されない理由は自明ではありません。
 
しかし、区分所有法は、専有部分の使用禁止の代わりに、占有者に対抗するための手段を別に用意しています。それが、占有者に対する引渡し請求という制度です。
この制度は、占有者が専有部分を占有している根拠を解消することにより、無権限で占有した状態にして、区分所有建物から立ち去らせる、という制度です。
 
まずこの制度を利用するための条件ですが、使用禁止の場合とほぼ同じです。つまり、(1)迷惑の程度が著しく、(2)他の方法による解決が困難で、(3)占有者による弁明を聞き、(4)総会の決議で3/4の賛成を得て訴訟を提起し、裁判所に認めてもらう、ことが必要です。
 
裁判所に認めてもらうと、その賃貸借契約など、その占有者がそこにいる元となる契約が解除されます。そして、占有部分は、訴訟を提起した人(管理組合など)に一度帰属し、それから、占有権を与えた人(貸し出した所有者等)に引き渡すことになります。
 

 

POINT

占有者に対する引渡請求も、
 
①専有部分の占有者が共同の利益に反する行為をし、またはそのおそれがあること
②義務違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
③差止請求や使用禁止請求によっては、障害を除表して共同生活の維持を図ることが困難であること
④ 訴えによること、の要件を満たすことが必要です。
 
また、事前に他の方法を実行したかどうかと関係なく訴えを提起できること、特別決義が必要であること、占有者に弁明の機会を与えなければならないこと、原告となる者などすべて使用禁止講式や競売請求と同じです。
 

 

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